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Latest documentary "Oyster Factory" has been officially invited to Locarno International Film Festival 2015! 最新作『牡蠣工場』がロカルノ国際映画祭へ正式招待されました!

Monday, July 22, 2013

熱狂なきファシズム

参院選、一部に光明も見られるが、全体的には1930年代ドイツを連想する流れに日本は進んでいるように感じ戦慄が走る。ただし、現代日本のそれは熱狂を伴わない、しらけムードの、無関心・無気力なファシズムである。だから危機感の温度も低い。しかしこれはかなり危機的状況である。

自民党の改憲案は発表されてから1年以上になる。その民主主義を否定する内容を「知らない」では済まされない。だけど大半の国民は知らない。人々が無関心・無気力なまま、ずるずるとファシズムの台頭に手を貸し参加していく。世界史に恐らくそんな例がないだけに、人々の危機意識も高まりにくい。

たしかにマスメディアは酷い。大事なことを伝えない。しかし、情報がないわけではない。自分から取りに行こうと思えば、ネットだろうと、書籍だろうと、講演会だろうと、いくらでも情報源はある。でも大半の主権者は無関心・無気力であり、それを取りにいかない。だからこその選挙結果である。

タル・ベーラ監督『ニーチェの馬』という人類の終末を描いた映画がある。人間が無気力になってずるずると滅んでいくさまを描いている。それがやけにリアルなのだ。実は『選挙2』の編集しながら、あの映画のことを思い出していた。今回の選挙結果も、あの映画を連想させる。その連想に凍りつく。

Thursday, July 18, 2013

投票所での投票時間短縮の問題

ジャーナリストの石川智也さんから頂いたメールを紹介します。石川さんは新聞記者で、投票所での投票時間短縮の問題について取材されたそうですが、紙面の都合で短い記事しか掲載できなかったそうです。しかし、この問題はとても重要です。以下が、石川さんが本当は紙面に載せたかった内容です。ブログ等で拡散してよいとのことですので、ここに掲載します。

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今回の参院選で、投票終了時間を公職選挙法で定められた「午後8時」から繰り上げる投票所が、全国でなんと35%もに及んでいます。これは1998年に投票終了時間が午後6時から2時間延びて以降、最高の割合です。繰り上げは本来は「特別な事情」がある場合に限られた例外措置ですが、人手不足や経費節減を理由に、国政選挙のたびに動きは広がる一方です。一票を投じる権利が遠ざかっている、そういってもよい事態ではないでしょうか。

 今回、繰り上げを実施するのは、全国4万8777カ所の投票所のうち1万6960カ所。過去最高の比率というだけでなく、数でも、1998年以降で最多です。
 福島県は全1314カ所の100%が繰り上げ。群馬県は943カ所中934カ所(99%)、鹿児島県は1246カ所中1139カ所(91%)、高知県は928カ所中832カ所(90%)……と続きます。

 ちなみに、公選法40条は投票時間を午前7時~午後8時と定めていますが、「選挙人の便宜のため必要があると認められる特別の事情のある場合又は選挙人の投票に師匠を来さないと認められる特別の事情のある場合に限り」開始時間を最大2時間前後でき、終了時間を最大4時間繰り上げられます。時間変更には2000年までは都道府県選管の承認が必要でしたが、地方分権一括推進法の施行で、市町村選管の判断のみで可能になりました。総務省は各都道府県選管を通じ、毎回「有権者の投票機会の制限につながりかねない措置には慎重な対応を」と要請していますが、繰り上げの動きは全国でなし崩し的に広がっています。

  繰り上げ投票所の割合は、98年参院選では全国で6%でした。以降、2000年衆院選9%、01年参院選15%、03年衆院選20%、04年参院選22%、05年衆院選24%、07年参院選29%、09年衆院選30%、10年参院選31%、12年衆院選33%と国政選挙のたびに拡大、数も98年の2966カ所から増え続け、今回は上記のとおり、1万6960カ所です。

 自治体にじっさい、繰り上げの理由を聞いてみました。多くの市町村は、2003年に導入された期日前投票の定着で、早めに投票する有権者が増えていることや、夜間の投票実績が少ないことを理由に挙げます。早めに投票を閉め切ることで、連動して当日の開票作業が早まり、場合によっては深夜に及びかねない職員の負担と人件費を減らせる利点を挙げる市町村も少なくありません。

 茨城県では今回、繰り上げ投票所の割合が74%と、昨年の衆院選時の54%から大幅に増えました。県南部の取手市は東京への通勤通学者も多い都市圏ですが、今回新たに全54カ所で2時間繰り上げを実施します。市選管は、期日前投票の定着や夜間の投票者の少なさという「定番」の理由に加え、「投票立会人や職員の負担軽減はもちろん、他自治体の動向も勘案して判断した」と説明します。茨城では今回、全44市町村の8割近い34市町村が繰り上げを実施します。さらに、経費節減も大きな理由といいます。繰り上げと開票前倒しで、人件費を110万円削減できる試算とのことです。

 福島県は昨年の衆院選に続き、繰り上げ投票所の割合が100%となりました。10年参院選時は69%でした。県選管は、投票機会の確保に努めるよう、市町村選管に度々要請していました。繰り上げの理由としては、やはり、期日前投票の定着や夜間投票者の少なさ、職員らの負担軽減などの理由が大半です。しかし、浜通りの市町村からは、震災による人手不足や、夜間は緊急時に避難誘導が困難になる、といった理由も挙がりました。いまだに地震が頻発し、福島第一原発事故も収束したと言えないなかで、緊急時に対応できる対応が確保できない、といった理由は、確かに切実な問題だと納得させるものがあります。

 繰り上げには自治体個別の様々な事情があり、もちろん「けしからん」と一刀両断できる話ではありません。投票所ごとに2人以上設けなければならない投票立会人の確保は、じっさい、多くの自治体で年々困難になっているようです。いつも決まった人に頼まざるを得ず、高齢化もあって負担が高まっているのも事実でしょう。農村部などでは、立会人を事実上紹介している自治会側の負担軽減の要求も少なくないと聞きます。

 ただ、投票時間が午後8時までに延ばされたのは、投票率の低下に歯止めをかけるためだった、という経緯があります。総務省は、繰り上げには「不都合がないというだけでなく、有権者の利益になる積極的理由が必要。期日前投票を行っていることだけでは、理由にならない」との見解です。本当にやむにやまれぬ「特別な事情」があると言えるのか、投票する権利を行使できる場の確保に努めているのか、安易な対応をしていないか、検証は必要でしょう。

 さらに重要なのは、投票時間の短縮だけでなく、投票所そのものの統廃合も進んでいる点です。

 98年衆院選時の5万3439カ所から減少の一途で、昨年衆院選で4万9214カ所、今回参院選では、上述のとおり4万8777カ所にまで減りました。やはり、人手不足と、投票立会人の確保困難などが理由です。総務省は、最寄りの投票所まで3キロ以上離れている場合や投票区の人口が3千人以上になった場合に投票所を増設することを通知で要請していますが、終了時間の繰り上げ同様、投票所数を決めるのも市町村選管の権限です。

 繰り返しますが、すべてひとくくりにして「安易な対応」と断罪するつもりはありません。職員定数削減の圧力もあり、平成の大合併で投票区の人口バランスが崩れたり開票所が遠くなったりといった事情も、もちろんあります。しかし「それはそれとして」、投票機会の確保に努めなければならない、というのも、一方の真理でしょう。もし、行政の効率の論理を主理由にこうした対応を行っているとしたら、コストをかけて「選挙」というシステムをあえて維持している民主主義の本旨から、大きく外れていると言わざるを得ません。税金を使って投票率向上の啓発活動をしながら経費節減を理由にするのも、理屈に合いません。「一票」への機会が少しずつ遠ざけられている・・・それほど軽く見てよい事態ではないはずです

ジャーナリスト 石川智也


Friday, July 05, 2013

選挙前に選挙について語れない「空気」について

今晩のJ-wave生出演中にも申し上げたのだが、「選挙前なので放送では政党名や候補者名を言えない」という放送各社の自主規制ガイドラインは全くおかしいと思う。選挙前だからこそ、報道機関は具体的な政党や候補者の政策や体質について詳報し議論すべきではないのか?

『選挙2』を試写で観て「面白かった」と言って下さったテレビやラジオ関係者も多いのだが、その多くが「でも選挙前なので取り上げにくいんですよ」と言われた。僕はこの理由には納得しかねている。『選挙2』を取り上げたからといって、公選法に違反するわけがない。現に新聞各社は取り上げている。

07年に前作『選挙』を参院選にぶつけて公開したときは、在京キー局各社は『選挙』の特集を組んでくれた。その際に「参院選前なので取り上げにくいです」と言われたことは、ほとんどなかった。この6年の間に、何が変わったのか?公選法が変わったとは聞いていない。変わったのは「空気」なのでは?

つまり、この6年の間に「選挙前に選挙や政党、候補者について語ることはタブー」という「空気」が醸造されたのではないかと疑っているのだが、それで本当にいいのだろうか?選挙前に選挙を語ることを自粛していながら、低投票率を嘆くのは自己矛盾ではないか?

日比谷図書館での『選挙』上映中止騒動もその「空気」の中で起きたように思う。そして、選挙期間中に選挙について語れないなら、人々の関心が喚起されず低投票率になるのは当たり前だろう。僕らは『選挙2』をわざと参院選にぶつけて明日から公開する。今こそ選挙について考え語り合いたいからだ。

『選挙2』は、観た後に人と語り合いたくなる映画だと自負している。観察映画は、当たり前だと思っていた風景を、あらためて観察し直すことを鑑賞者に促すからだ。明日と明後日、イメージフォーラムでは全回で舞台挨拶をする。ぜひ皆さんと選挙について、震災後の日本社会について語り合いたい。

(ツイートをまとめました)

Wednesday, July 03, 2013

シアター・イメージフォーラムでの『選挙2』イベント

いよいよ7/6(土)から公開がスタートするシアター・イメージフォーラム。
劇場イベントが決定しました!初日2日間は、全ての回で舞台挨拶を行います!
ぜひ劇場にお越しください。

【7月6日(土) 『選挙2』初日】
◆13:20-の回上映後:想田和弘監督、山内和彦さん舞台挨拶
◆16:20-の回上映後:想田和弘監督、山内和彦さん舞台挨拶
◆19:20-の回上映前:想田和弘監督、山内和彦さん舞台挨拶

【7月7日(日)】
◆13:20-の回上映後:想田和弘監督舞台挨拶
特別ゲスト「ゼロノミクマ」登場!



◆16:20-の回上映後:想田和弘監督舞台挨拶
◆19:20-の回上映後:想田和弘監督舞台挨拶

【7月9日(火)】
◆13:20-の回上映前:福本ヒデさん(ザ・ニュースペーパー)想田和弘監督、山内和彦さんによるトーク
社会風刺コント集団「ザ・ニュースペーパー」福本ヒデさんがニセ安倍首相として登場!



◆16:20-の回上映後:想田監督舞台挨拶


[全席自由席|各回入替制|整理券制]
いずれの回も当日10:15から整理券を配布いたします。
特別鑑賞券をお持ちの方も、当日劇場受付にて整理券との交換が必要になります。
トークは、上映回をご覧の方のみがご参加いただけます。

◆シアター・イメージフォーラム(東京都渋谷区渋谷2-10-2)
電話:03-5766-0114
HP:http://www.imageforum.co.jp/theatre/

千代田区の見解に対する僕の疑問と見解



日比谷図書館での『選挙』上映中止騒動について、千代田区から見解が。

「パンフレットに今回の参議院議員選挙立候補予定の現職議員の名前も見受けられたことから、公平中立な立場を取るべき指定管理者が主体的に開催する事業としてふさわしいかどうかについて確認した」とある。文脈から察するにパンフレット=チラシのことだと思うが、そんな名前はチラシにないので不可解(添付の写真)。

また、千代田区はあくまでも映画の内容ではなく指定管理者との共催であることが問題であるかのように書いているが、それならば上映中止を告げられたときに「東風単独で主催したい」と申し出てもそれが却下されたのはなぜか。これも不可解。

いずれにせよ、チラシに「立候補予定の現職議員の名前」があっても問題にはならないはずだ。公職選挙法では、特定の候補者や政党の選挙運動のための文書や図画の頒布を規制しているが、名前が出ているだけでは選挙運動にはならない。たとえ立候補予定者が映像に映っていてもそれだけでは問題ではない。この辺は、多くのマスコミ関係者や人々が誤解している。だから何となく自主規制する。

いずれにせよ、千代田区も公式見解を出すなら、基本的な事実確認くらいすればいいのにねえ。


以下、千代田区のWebサイトから転載。

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千代田区立日比谷図書文化館における映画「選挙」上映会に関する区の対応について
更新日:2013年7月2日

新聞等で報道のあった千代田区立日比谷図書文化館(以下、「館」という。)における映画「選挙」上映会に関する区の対応について報告します。

はじめに、区は6月20日に、本上映会のパンフレットが区内で配布されているとの情報を得て、本上映会が開催されることを把握しました。

通常、館において指定管理者が主催または共催するイベントを開催する場合には、定期的に開催されている指定管理者と区の打ち合わせ時に、指定管理者からその旨の情報提供がなされます。しかしながら、本上映会(当初のパンフレット上では指定管理者構成員である株式会社図書館流通センター(以下「TRC」という。)の共催事業)については、指定管理者から何ら情報提供がなかったため、指定管理者に事実関係の報告を求めました。

加えて、本上映会が7月2日という国政選挙を控えた時期において開催されること、パンフレットに今回の参議院議員選挙立候補予定の現職議員の名前も見受けられたことから、公平中立な立場を取るべき指定管理者が主体的に開催する事業としてふさわしいかどうかについて確認したところです。本作品について内容的に問題があるというスタンスで臨んだものではなく、中止要請も行っておりません。

その後、一時、TRCから「上映中止の判断を行った」との報告を受けました。その際、「会社としてまったく関与していない上映会であり、社員が個人的に進めていたものである。会社としては社名を使用されたこと自体が遺憾であり、会社のガバナンス上の問題として重く受け止めている。」との報告を受けました。

重ねての説明となりますが、区は、本作品の内容を問題視したのではなく、あくまでも前述のようなプロセスに問題があったものと認識しています。

なお、指定管理者制度は、地方自治法に定められた制度であり、単なる業務委託とは違い、区が指定管理者に一定の権限を委ねた上で、指定管理者自らが自由度を持って公の施設の運営管理を行うことを特徴としています。

このたび、上映会が間近に迫った中での区及び指定管理者の対応により、関係者の皆さまにご心配をお掛けしたことは誠に遺憾であります。今後は指定管理者との連絡体制を密にし、適正な事業運営に努めてまいりますので、ご理解のほどお願い申し上げます。

担当:区民生活部図書・文化資源課
http://www.city.chiyoda.lg.jp/koho/bunka/bunka/toshokan/hibiya.html

Monday, July 01, 2013

公開質問状と上映後トークへの参加要請、そして抗議文

本日(7/1 月曜日)、16時53分に、千代田区・区民生活部・図書文化資源課・石綿主査宛に「公開質問状と上映後トークへの参加要請、そして抗議文」をメールした。送信先のメールアドレス(tosho-bunkashigen@city.chiyoda.lg.jp)は千代田区のホームページに掲載されているものである。文面は以下の通り。


千代田区・区民生活部
図書文化資源課 石綿主査さま

はじめまして。ドキュメンタリー映画『選挙』の監督で映画作家の想田和弘と申します。

明日7/2(火)、18時15分から千代田区立・日比谷図書館で映画『選挙』を上映し、私と主人公の山内和彦さんとのトークイベントを開催します。

ご承知の通り、当初この企画は、日比谷図書館の指定管理会社のひとつであるTRC(図書館流通センター)と東風(配給会社)の共催で行われる予定でした。しかし、TRCからの説明によれば、石綿主査が映画の内容と上映時期に懸念を示したために、TRCがいったん中止を決めました。その後、TRCは私たち(想田と東風)の抗議を受け、東風の単独主催で上映を実施することを受け入れましたが、私たちはこの事態に至った経緯を看過できないものと受け止めています。

その詳しい理由は、下に貼付けたように、6/28付けの私のブログで表明いたしました。

石綿主査は、複数の新聞社の取材に対して「映画の内容に懸念を示したことはない」と仰ったそうですが、それならばなぜ、TRCは上映の中止を決定したのでしょうか。中止決定の当初、TRCは東風の単独主催でも開催は不可能だと仰っていました。つまり、共催・単独いかんに関わらず、上映そのものが好ましくないとの判断でした。それはすなわち、「映画の内容に問題がある」ことを意味しませんか?

TRCからは、石綿主査が「上映するのをやめろ」とTRCにはっきり仰ったわけではなく、懸念を示しただけだと聞いております。しかし、いつでも区との契約を打ち切られかねない弱い立場の存在であるTRCの事情を考えれば、懸念を示したこと自体が、事実上の検閲ではないかと私たちは疑念を抱いております。その点、どのようにお考えなのでしょうか。

私たちは、石綿主査からの直接の説明を要求するものであります。大変お忙しいとは存じますが、明日の上映会後のトークではこの問題についてオープンに議論する所存ですので、ぜひ石綿主査にもおいでいただき、ご意見を述べていただけませんでしょうか。

いずれにせよ、石綿主査による懸念の表明を発端として、映画『選挙』はいったん上映中止になりました。それは厳然たる事実です。そして私たちは、その一連の経緯は、日本国憲法第21条で保障された私たちの「表現の自由」を脅かす重大な問題であると認識するとともに、千代田区に対して厳重に抗議するものであります。

なお、この文章は私のブログに「公開質問状と上映後トークへの参加要請、そして抗議文」として掲載させていただきますので、ご留意下さい。

2013年7月1日

想田和弘

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日比谷図書館での『選挙』上映が一時中止された件について
Friday, June 28, 2013
http://documentary-campaign.blogspot.jp/2013/06/blog-post_28.html

明日から渋谷のシアター・イメージフォーラムで『選挙』の再上映が始まる。DVDも出てるし、日本のみならず世界中でTV放映もされた作品だ。それなのに、まだまだこの映画にタブー感を抱く人たちがいる。そのことを痛感する出来事に遭遇したので、勇気を出して紹介したい。

7/2(火)に予定されている千代田区立・日比谷図書館での『選挙』上映と山さんとのトーク、実は開催を危ぶまれていた。なぜか?先週の金曜日(6/21)、千代田区図書・文化資源課が上映に懸念を示し、図書館を運営する指定管理会社が中止を一方的に決定したからだ。

すでにチラシは刷り上がり、告知も済んでいた。にもかかわらず、共催である配給会社・東風に一言の相談もなく、中止は決定された。説明を求め、一昨日(6/26)午前中に指定管理会社の担当者の方々に面会した。その時点で、中止は決定済みで変更できないと言われた。

彼らの説明によれば、千代田区の懸念の内容はこうだ。「参院選の前にセンシティブな内容の映画を上映することは難しいところがある。怖い。映画が選挙制度そのものについて一石を投じる内容になってしまっている。議論が起きること自体が好ましくない。過去に苦情等のトラブルが生じたこともある」

しかし、映画『選挙』は特定の政党や候補者を応援したりするものではないので、公職選挙法に触れたりはしない。その点は区も承知しているという。では、何が問題なのか。違法でもないのに、なぜ上映を中止するのか。僕らは疑問を表明し、抗議した。また、中止するなら中止の理由を公表すると伝えた。

すると午後になって再び面会を求められた。中止ではなく、参院選後に延期してもらえないか。それが彼らの「お願い」だった。しかしそれは僕らには受け入れられない。選挙前だからこそ映画を観て語りたいのだ。適法なのだから、今こそ堂々と上映し語るべきなのだ。逆に上映できない理由はないはずだ。

結局、指定管理会社との「共催」ではなく、東風の単独主催で上映することに落ち着いた。したがって会場費は東風が負担し、チラシも東風が刷り直す。大きな負担だ。しかし上映が、そして我々の表現の自由がギリギリで守れたことは成果だ。

「選挙直前に選挙について語るのはダメ」などという不条理を許容しないで済んだことも良かった。だいたい、選挙期間になると、選挙について、政治について語れなくなくなることこそが、ニッポンの民主主義の本質的な問題なのだ。

とはいえ、腑に落ちない点がある。ある新聞社の記者が千代田区図書・文化資源課の担当者に取材したところ、「映画の内容に懸念を示したことはない」と言ったというのだ。だとしたら、指定管理会社が僕らに嘘を付いていたというのか?そんなわけはないだろう。

そもそも、この上映&トーク企画を率先して提案してくれたのは、映画『選挙』を好いてくれた指定管理会社のスタッフである。その有志が勤務外にボランティアで準備を進めてくれていた。僕はそれがとても嬉しかった。そんな彼らが、自分から中止を決めるわけがない。

僕の想像はこうだ。区の仕事を請け負う指定管理会社は、とても立場が弱い存在である。何か問題が起これば、契約を切られ雇用も失われる。だから区の意向には逆らいにくい。だからちょっとした懸念にも敏感に反応し忖度(そんたく)する。

区はそういう指定管理会社の弱い立場につけ込み、すべての責任を押し付けようとしているのではないか?そんなことが許されていいのか?指定管理者制度は、何か問題が起きた時に役所が民間に責任を押し付けるための装置なのか?それこそ、無責任ニッポン社会の典型ではないか?

僕はこの事実を公表することに、ためらいを感じた。指定管理会社の立場が、更に弱くなることを恐れたからである。下手をすると次の契約更改時に不当に切られる可能性がある。すると社員の仕事も失われる。それは僕の望む所ではない。彼らは一生懸命仕事をしている。

しかし、区がシラを切り通そうとしているならば、それを伏せたままでよいのだろうか?このまま「何事もなかったかのように」上映をしていいのだろうか?だいたい、区は「表現の自由」を軽く考え過ぎているのではないか?実はこのようなことは、これまで公にならないだけで、頻繁にあったのではないか?

中島岳志さんが「「リベラル保守」宣言」の印刷直前に、NTT出版から橋下徹大阪市長について書いた章の削除を求められ、新潮社に出版社を引っ越したというツイートを読んだ。同じようなことが、あちらこちらで起きているのではないか?

『選挙2』の中で、路上で選挙運動をする自民党議員から撮影拒否を受けたことも思い出した。僕は撮影を続行したが、川崎市連の弁護士からは「映像を使うな」という通知書が届いた。だが、もちろん映像は使った。これらの出来事は、すべて根っ子で繋がっているように思う。

ものを言いにくい雰囲気。これが社会の隅々にまで充満している。その雰囲気を打破する唯一の方法は何か?タブーなく語ることである。逆に、語ることを自主規制すれば、ものを言いにくい雰囲気に加担することになる。

僕は問題の所在を明らかにし、オープンな議論を巻き起こすためにも、今回の経緯を公表する必要があると判断した。その決断に東風も賛意を示した。指定管理会社の皆さんには申し訳ないという気持ちもある。しかし、彼らも一度は中止の決定をした主体だ。一定の責任は感じてもらいたい。

7/2の日比谷図書館での上映後のトークでも、この問題について語りたいと思う。個人の責任を追及するつもりは一切ない。そんなことより、問題提起をしたい。語ることはタブーだという雰囲気があるが、そのタブーこそが問題だと思うのだ。

現時点で、区の担当者とは僕らは一度も話していないし、面会もしていない。僕の申し上げていることが間違っているなら、区はトークの場に出てきて反論して欲しい。僕は誰かを糾弾するつもりはない。僕が求めているのは、対話であり、率直な議論である。

想田和弘